言うまでもなくラボノート(実験記録類)は非常に重要です。
研究者でしっかりつけていない人はさすがにいないでしょう。基本的に紙のノートに手書きで書くことが原則でありましたが、最近はその流れも変わっています。ここでは、電子ラボノートについてまとめてみたいと思います。
電子ラボノートの活用で研究生活を効率化する
1. 電子ラボノートとは?
電子ラボノート(Electronic Lab Notebook, ELN)は、研究者が実験の計画、実施、結果の記録をデジタル化するための電子ツールの総称です。規格があるわけはありません。
デジタル管理のノートですので、従来の紙ベースのラボノートと比べて、データの検索性、共有性、持続性が大幅に向上していることが多いようです。また、データの整理や分析、レポート作成などの作業を効率化する機能も備えています。
特化した ELN サービスの他に、たとえば Microsft の OneNote や、 Evernote、Notion AI などを用いてラボノートを取る方法も多く提案されていたりしますが、今回は省きます。
2. 電子ラボノートの利点
2.1 データ管理の効率化
電子ラボノートを使用すると、実験データをより容易に一元的に管理できます。これにより、データの検索や整理が容易になり、時間を節約できます。また、データのバックアップやセキュリティも電子化されているため、紙ベースのノートと比べてデータの紛失リスクが低減します。
また、生データを劣化させずにデジタルで貼り付けておける点も非常に有用です。紙のノートに印刷したものを貼り付けるのとは異なります。
中にはインベントリ・サンプル管理機能、設計情報等の総合管理機能を内蔵したものもあります。
2.2 コラボレーションの強化
電子ラボノートは、研究者間のコラボレーションを強化することに貢献できる場合があります。共同研究者とのデータ共有や、実験結果のフィードバックをリアルタイムで行うことが可能です。これにより、研究の進行をスムーズにし、研究成果を早期に得ることが可能になります。
2.3 コンプライアンスの確保
電子ラノボートは、実験の全過程を詳細に記録し、それを時系列で追跡することが可能です。これにより、研究の透明性を確保し、コンプライアンスを満たすことが容易になります。特に、製薬業界など、厳格な規制が存在する分野では、電子ラボノートの利用はほぼ必須となりつつあるようですね。
3. 電子ラボノートの欠点
一方で、電子ラボノートには以下のような欠点も存在します。
3.1 導入コスト
電子ラボノートの導入には、ソフトウェアの購入費用や研究者の研修費用など、初期コストが必要です。また、システムの維持・更新にも継続的な費用が発生します。
3.2 データセキュリティや組織のポリシー
電子ラボノートは、実験データをクラウド上に保存するため、データのセキュリティが重要な課題となります。データ漏洩のリスクを最小限に抑えるためには、信頼性の高いセキュリティ対策が施されたソフトウェアを選ぶことが重要です。
また、組織によってはデータを組織外に出すことが禁止されている場合も多いと思われます。環境の整備は重要です。
4. 具体的な電子ラボノートのサービス
以下に、電子ラボノートのサービスを2つ例示します。
4.1 Labguru
Labguruは、電子ラボノートだけでなく、実験の計画、インベントリ管理、データ分析など、研究の全過程をサポートする統合的なプラットフォームを提供しています。
データのセキュリティや規制への対応にも力を入れているようで、FDA の21 CFR Part 11 などの規制に準拠した機能を提供しています。
4.2 Benchling
これは実は愛用しています。
Benchling は、ライフサイエンス研究に特化した電子ラボノートです。書きやすいノート、プロジェクト管理、カレンダー形式の表示などが優れています。
特に、分子生物学の実験に必要な機能(DNA配列の設計や解析、CRISPRの sgRNA配列の設計など)が充実しています。200,000人以上の科学者が Benchling を使用しており、そのユーザーベースの広さも魅力の一つといえると思います。
まとめ
電子ラボノートは、研究の効率化と品質向上に大いに貢献するツールです。しかし、導入にはコストやセキュリティ対策などの課題もあります。自分の研究のニーズに最も適したサービスを選ぶことが重要でしょう。